北朝鮮のミサイルを日本が迎撃しないのはなぜなの?

  • 2017.09.18
北朝鮮のミサイルを日本が迎撃しないのはなぜなの?

北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過していく度に上がるテーマの一つが「ミサイルの迎撃」です。2017年8月29日、同年9月15日と2度にわたって北海道上空を北朝鮮のミサイルが通過しましたが、日本政府はこれを「迎撃」しませんでした。

どちらのミサイルの場合も、安倍首相は「発射直後からミサイルの動きを完全に把握し、万全の態勢をとっていた」と発言していました。また、小野寺防衛大臣も北朝鮮がグアムへのミサイル発射予告騒動を起こした際に「十分に迎撃可能」と主張していましたし、菅官房長官も「迎撃も含めた対応をするだろう」と言っていました。

となると尚のこと「じゃぁ、どうして迎撃しなかったの?」と思う方も多いかと思います。ということで、今回は北朝鮮の弾道ミサイルを日本が迎撃しなかった理由についてリサーチしていきたいと思います。


北朝鮮のミサイルを迎撃しなかった理由

SOURCE : ジジドットコムニュース

一言で言うのは難しいんですが敢えて言うとすれば「今回のミサイルが中距離弾道ミサイル(IRBM)・大陸間弾道ミサイル(ICBM)だったから」ということになります。以下、簡単に説明させて頂きますね。

この中距離弾道ミサイル・大陸間弾道ミサイルというのは自国から遠い相手を狙う時に使うミサイルです。自国に近い相手を狙う時には使用しないミサイルなんですね。もし自国に近い国を狙う時はそれ専用の近距離・準中距離ミサイルを使います。

今回北朝鮮が日本上空を通過させたミサイルというのは、先程も触れたように、遠い国を狙う時に用いる中・長距離用ミサイルでした。つまり、北朝鮮はもともと日本をターゲットにはしていなかったということです。日本はそのことを把握することができたので迎撃しなかったということです。自国が狙われているわけではないのにわざわざ迎撃する必要はないということなんですね。(領空侵犯もなかったのでなおのことそう言えます。)

さて、そうだとすると、関連していろいろな事が気になるかと思います。「北朝鮮から発射されたミサイルが弾道ミサイル(中・長距離ミサイル)だというのはどの時点で分かるの?」「近距離用ミサイルで狙われた時はちゃんと迎撃できるの?」などなどです。この辺りもリサーチしてみたので気になる方は続きからどうぞ。

北朝鮮から発射されるミサイルの種類はどの時点で分かるの?

北朝鮮から発射されるミサイルの種類を見極めるのは極めて重要です。中距離・長距離用か近距離・準中距離用かでその意味合いが全く変わってくるからです。前者であれば日本は関係ありませんし、後者であれば狙われているのは日本ということになるので一大事です。では、どの時点でミサイルの種類を特定できるんでしょうか?

結論から言うとミサイル発射1分以内に種類の特定が可能です。流れは次のようになります。北朝鮮からミサイルが発射された直後から、早期警戒衛星・早期警戒機・日米韓のイージス艦・各種レーダーやセンサーなどで追跡が瞬時に始まります。その後、追跡データの解析により弾道軌道や着弾予想地点がはじき出され、約1分で迎撃に最適な地点の割り出しができるようになっています。

SOURCE : In the Strawberry Field

なので、北朝鮮からミサイルが発射された!ミサイルの種類がよく分からない!現場パニック!ということにはならないということです。的確な判断ができる体制がしっかりと取られています。そういう意味では安心できますね。

8月29日、9月15日の2度のミサイル発射の時は実際どうだったの?

ちなみにですが、今回の8月29日、9月15日の2度のミサイル発射に関しては、日本政府は発射前の段階から事前に情報を入手していたと思われます。そう考えられる理由を簡単に取り上げてみたいと思います。

まず、1回目の8月29日のミサイルについてですが、安倍首相の対応が異常に早かったんですね。ミサイルが発射されたのが早朝5時58分頃。みんな寝ている時間ですよね。にも関わらず、安倍首相はそのわずか3分後(!)の6時1分には「総理指示」を出し、26分後の6時24分にはスーツを着て頭髪も整えてぶら下がり取材に応じているんです。

8月29日6:26に取材に応じる安倍首相

SOURCE : まとめまとめ

もしミサイル発射の情報を何も得ていなかったとしたらここまで迅速すぎる対応をとることなんて絶対にできません。事前にアメリカや韓国などからミサイル発射の情報を入手していたからこそできた対応と言えます。(そして、その情報の中には当然ミサイルの種類についての情報も含まれていたはずです。)

次に、2回目の9月15日のミサイルについてですが、こちらはアメリカや韓国から民間レベルで情報が事前に入ってきていました。「北朝鮮が中距離ミサイルもしくは長距離弾道ミサイルの発射準備態勢に入っている」という情報です。民間レベルで情報が事前に入ってきているということは政府レベルでは当然入ってきているということになります。

このように、日本政府は、1回目も2回目も、北朝鮮が発射するミサイルは中・長距離弾道ミサイルということを事前に把握していたので、現場としては特に慌てることもなく、かつ、迎撃することもしなかったということなんですね。(もちろん厳重に監視・警戒はしていたはずです。)

現在の日本の迎撃システムで近距離・準中距離ミサイルは迎撃できるの?

SOURCE : WOW.com

次に、現在の日本の迎撃システムで北朝鮮の日本向けのミサイルをちゃんと迎撃できるのかどうかについてです。結論から言うと「ほぼ可能」と言えそうです。以下、詳細を書いていきますね。

まずは迎撃率についてです。

SM-3を用いたイージスBMDの迎撃試験はこれまで34回実施され、そのうち27回の迎撃に成功(2017/6/22更新)しています(2006年12月のFTM-11(迎撃ミサイル発射されず)はカウントしていません。また、2008年11月のPacific Blitzは1発成功・1発失敗でMDAは失敗扱いとしています。)。迎撃率は約79.4%(2017/6/22更新)です。

SOURCE : 海国防衛ジャーナル

日本のミサイル迎撃の主役を担うのはイージス艦に搭載されているSM-3という迎撃ミサイルです。そのSM-3の迎撃率は引用文にあるように約80%です。これはかなり高い確率です。

迎撃試験環境もかなり実戦形式でされているようです。迎撃対象模擬ミサイルの発射時刻を不明な状態でテストしたり、夜間にテストしたりといった状況下でもされていて、その中での80%なので十分実践で使えるレベルではないでしょうか。

参考までにですが、北朝鮮が日本をミサイル攻撃する場合に用いると考えられているのが「ノドン」という準中距離ミサイルです。その「ノドン」を北朝鮮は200発所有しています。しかし、その「ノドン」を発射するための土台装置が50基しかないので、仮に日本に「ノドン」を一斉に打ち込んできたとしても最大50発です。

対して、防衛する日本の能力ですが「迎撃ミサイルSM-3」を8発搭載できるイージス艦を4隻持っているので計32発、在日米海軍が保有する「迎撃ミサイル」が45発。さらに「迎撃ミサイルSM-3」が打ち漏らしてしまった場合に備えて用意されている「地対空ミサイルPAC3」のミサイルが384発。在日米軍が保有するものが約400発。

以上をまとめてみると・・・

  • 北朝鮮:ノドン50発
  • 日本:SM3迎撃ミサイル77発+PAC3ミサイル784発

となり、十分対応可能な数字に見えます。もちろん、これはイージス艦やPAC3が適材適所に配置されていればの話ですが、北朝鮮が日米に察知されずにノドン50発を同時発射体制にもっていくことはまず無理なので、そう考えれば、トータル的にはまずまず安心できるのではないかと思います。(そもそもノドン50発同時発射も相当ありえないことですが・・・。(^_^;) )

参照:海国防衛ジャーナル

まとめ

「北朝鮮のミサイルを日本が迎撃しないのはなぜなのか?」北朝鮮のミサイル問題が話題に上がる度にみんなが疑問に思うこの点を今回は取り上げてみましたが、いかがだったでしょうか。

日本としては、北朝鮮が中・長距離弾道ミサイルを発射している限りは脅威ではなく、「ノドン」のような準中距離ミサイルを発射する時こそが真の脅威となるということなんですね。万が一、そんな時が来てしまった場合は、日本は持てる迎撃能力を結集させて迎撃態勢に入るに違いありません。そんな真の脅威が来ないことを願うばかりですが、果たしてこの先どうなっていくんでしょうか・・・。

最後までお読みいただきありがとうございました!